東京高等裁判所 昭和60年(う)541号 判決
被告人 大久保文義
〔抄 録〕
職権をもって検討するに、原判決は、罪となるべき事実として、被告人が公安委員会の運転免許を受けないで、原判示の日時、場所において、普通乗用自動車を運転した旨の事実を認定したが、その証拠として、被告人の原審公判廷における供述、被告人の司法巡査及び検察官に対する各供述調書並びに交通事件原票を挙示するのみで、他に何らの証拠を挙示していない。ところで、右証拠中、被告人が公安委員会の運転免許を受けていないことに関するものは、被告人の原審公判廷における供述並びに司法巡査及び検察官に対する各供述調書のみであり、これらはいずれも被告人の自白であるから、これを補強すべき証拠を挙示しなかった原判決には、刑訴法三一九条二項に違反して自白のみによって事実を認定した違法があり、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反にあたるというべきである。したがって、原判決は、この点で破棄を免れない。
(内藤 本吉 阿部)